強者カマキリの最期

下町育ちの私には
田んぼの豊かな生態系が
とても新鮮に目に映ります。

田の底で土を耕すイトミミズ
水路のドジョウ
絶滅危惧種の蝶やトンボ
カヤネズミ

最近では、
蛇の交尾も初めて目にしました。

いつも頭上ではトンビが旋回して
田畑を見下ろし、
気づくと田んぼにアオサギと二人きり
なんてシチュエーションにも慣れてきました。

農薬を撒かずに稲作ができるのは
この、多種多様な生態系のお陰です。

豊かさの恩恵を享受するような有り難さを、
田んぼで感じていました。

そんな中、秋風が吹き始めた田んぼの水路に
カマキリの姿をよく見かけるようになりました。

最初は、落ちたのだと思って
見つけるたびに掬い上げていたのですが

「無駄だよ!」
と田んぼの先輩に教わりました。

カマキリを水の中から助けても、
また自ら水に落ちに行くのです。

見渡せば
水路の中にはかなりの数の
カマキリの亡がらがありました。

衝撃的な光景ですが
この理由を聞いて、さらに衝撃を受けました。

<以降 閲覧注意>

正体は、針金虫(ハリガネムシ)
という寄生虫の仕業でした。

針金虫は
カマキリに食された後で
カマキリの体内に寄生し

成長すると
脳をコントロールしてカマキリを水へと誘導し
水中でカマキリの体からニョロニョロと出てくる
針金のような細長い虫です。

水を求めるのは
カマキリの意志ではなくて
寄生虫の仕業だったのです。

昆虫界の強者(つわもの)
カマキリの最期が
一度食した寄生虫の操作による投身
その事実にショックを受けました。

正々堂々と戦ったら簡単に食われるけれど
寄生して、コントロールして、
自滅へと向かわせ、自分は生き延びる。

いや、むしろカマキリは
死に際さえ、次の命に役立たせるとも
見えるのです。

『豊かなさ生態系』と賛美する
田んぼの中で繰り広げられていた
熾烈な生存競争を目の当たりにし

水没するカマキリの姿に
『盛者必衰の理』を見届けた気持ちになりました。

でも、これさえも、豊かさの一部を担ってるという
綺麗事ではない命の循環を見たのでした。

周辺の田んぼでは、
早々に稲刈りが始まっています。

今年は、早く育って早く刈り取れる
早稲(わせ)の品種が多いようです。

あれだけ追われた夏草や
暑さを掻き立てていたカエルやセミの声が
静かに止みました。

この夏が、あの景色が
幻だったかのようです。

夏草や 兵(つわもの)どもが 夢の跡
(奥の細道/松尾芭蕉)

そう謳いたくなる景色を、今眺めています。

この記事は役に立ちましたか?
もし参考になりましたら、下のボタンで教えてください。

関連記事